大阪地方裁判所 平成10年(ワ)3729号 判決 1999年7月23日
原告
川舩博司
被告
アズモーターハウスこと東幸仁
ほか一名
主文
一 被告らは、連帯して、原告に対し、金九七六万二六〇三円及びこれに対する平成八年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その二を被告らの、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、連帯して、原告に対し、金二二二一万九三六三円及びこれに対する平成八年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
(被告東幸仁)
1 原告の被告東幸仁に対する請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
(被告中嶋憲司)
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 (本件事故)
(一) 日時 平成八年四月二四日午前九時四五分ころ
(二) 場所 大阪府枚方市中宮山戸町二六番二五号先路上
(三) 被告車両 被告中嶋憲司(以下「被告中嶋」という。)保有、運転の普通貨物自動車(京都四六の二五五〇)
(四) 原告車両 原告所有、運転の原動機付自転車(八幡市か六八四一)
(五) 態様 前記場所において、被告車両が渋滞中の対向車線に対して、渋滞車両の間を縫うように右折しようとしたところ、おりから対向車線、道路左端を直進進行してきた原告車両と出合い頭に衝突した。
2 (責任)
(一) 被告中嶋
(1) 被告中嶋は、対向車線の渋滞車両間を右折進行するに当たっては、渋滞車両とその左側方の歩道との間には、幅約一・七メートルの通行の余地があったのであるから、同余地を対向直進してくる車両の有無に留意し、その安全を確認して右折すべき注意義務があった。
しかるに、被告中嶋は、これらの安全確認義務を何ら履行せず、一時停止も最徐行もせず右折進行した過失により、折から対向車線の道路左端を直進進行してきた原告車両に、被告車両前部を衝突させ、原告車両と原告をもろとも路上に転倒させた。
(2) 被告中嶋は、本件事故当時、被告車両を保有していた。
(3) よって、被告中嶋は原告に対し、自動車損害賠償保障法三条の運行供用者責任を負う。
(二) 被告東幸仁
(1) 本件事故は、被告中嶋の過失に基づき発生したものであるが、本件事故発生時は、被告東幸仁(以下「被告東」という。)の経営する中古車自動車販売(アズモーターハウス)の従業員として稼働中であった。
本件における、以下の客観的事情に照らせば、行為の外形から観察して、被告中嶋が「事業の執行につき」不法行為をなしたものであり、被告東が使用者責任を負うことは明らかである。
(2) 業務執行性を基礎づける客観的事情
<1> 本件は、被告中嶋が一旦出勤後、勤務時間中の午前九時四五分ころ、「ガソリンを入れて店に戻るために」走行中に惹起したものである。
<2> 被告東は、中古自動車の販売や修理等、自動車につき関連各種の業務を個人営業として行うものであり、雇用する従業員は被告中嶋を含め少数であって、その業務規模は大規模とは言い難い。
また、右業務は、一般に、その性質上、店舗内にのみに止まって営業をすることが可能な職種ではなく、店舗外での業務も当然に行っていた。
そして、少人数で右業務を行っていた状況からすれば、従業員の担当職務が峻別され、店頭での販売に限定されるなどとは到底考えられず、従業員が日常的に業務そのもの及び業務に密接に関連する行為を店舗外において行っていたものと通常考えられる。
<3> 本件事故の加害車両は、普通貨物自動車であって、通常、単なる私用のみを用途として乗用する車種ではない。
かつ、加害車両で被告中嶋が通勤することを被告東は容認していたのであるから、被告中嶋が従事する何らかの業務に使用することも容認していたと考えるのが自然である。
少なくとも、中古自動車販売・修理業従業員が勤務時間中に店舗近くで普通貨物自動車を運転していれば、外形的に業務執行行為であることは明白である。
<4> 運行していた目的も「ガソリンを入れて店に戻るため」というのであり、業務執行行為そのものまたは業務に密接に関連する行為として通常十分にあり得るものである。
(3) よって、本件事故は、被告東の従業員がその業務の執務中に発生させたものであることは明らかであり、被告東は、民法七一五条に基づき使用者責任を負う。
3 (受傷、治療経過、後遺障害)
(一) 原告は、本件事故により、第七頸椎骨折、頸髄不全損傷の傷害を受けた。
(二) 原告は、市立枚方市民病院において、次のとおりの治療を受けた。
(1) 市立枚方市民病院
平成八年四月二四日から同年六月二四日まで入院六二日間
平成八年六月二五日から同年一二月二五日まで通院(実通院日数五〇日)
(2) 小原整体鍼灸院
平成八年九月三日から同年一二月三日まで通院(実通院日数六三日)
(三) 原告は、平成八年一二月、症状固定となったが、前記受傷内容に基づき、自覚症状として、左前腕内側から手尺側の疼痛、手尺側のしびれ感、左頸部から左肩の疼痛、右上肢外側のビリビリ感、右足背のしびれ感が残存し、首の根本を押さえられると激しい疼痛がある。
また、他覚的所見として、左尺側の知覚鈍麻、頸椎の伸展が三〇度に制限されている、左握力の低下(左三六・七キログラム、右四一・六キログラム)がある。
主治医からは、今後とも二年間は、半年に一回、その後は年に一回の頸部レントゲン検査を含めた経過観察が必要であると言われている。
(四) 原告は、右後遺障害については、自動車保険料率算定会にて、後遺障害等級一二級一二号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当する旨の認定を受けている。
4 (損害)
(一) 治療費関係 三一万九四三〇円
(1) 市立枚方市民病院 一九万〇四三〇円
入通院治療費については、原告の勤務先である小松製作所健康保険組合の保険を使用して加療し、自己負担部分については、被告らにおいて支払済みである。
よって、未清算分として、事故当日である平成八年四月二四日から同年一二月二五日までの分合計一九万〇四三〇円を計上する。
(2) 小原整体鍼灸院 一二万九〇〇〇円
平成八年九月から集中して通院加療を受けたが、平成八年九月三日から同年一二月三日までの分が未清算であるので計上する。
(二) 頸椎装具費用 七万八九九六円
原告は、第七頸椎骨折、頸髄不全損傷の傷害により、主治医より、入院期間中に、二回にわたり頸椎装具の装着を指示された。
平成八年五月一日指示分 六万九〇二〇円
平成八年六月一九日指示分 九九七六円
(三) 入院雑費 八万六八〇〇円
1400円×62日=8万6800円
(四) 通院交通費 六万二〇〇〇円
市立枚方市民病院への通院分
(210円[京阪宇治交通]+200円[京阪電車]+210円[京阪バス])×2×50日=6万2000円
(五) 休業損害 三二一万九一六八円
(1) 原告は、本件事故当時、大阪府枚方市上野所在の株式会社小松製作所大阪工場にて、現場製造工程員(土木機械であるブルドーザーのキャタピラの製作のためにNC旋盤を操作していた。)として稼働していた。
原告は、本件事故により、平成八年四月二四日から同年九月一六日までの一四六日間の休業を余儀なくされた。
事故前の支給給与額 一日当たり一万八六六七円
(88万4340円+79万5701円)÷90日=1万8667円
一部支給額四万八七七四円
1万8667円×146日-4万8774円=267万6608円
(2) 原告は、右休業により、次のとおりの賞与の減額をされた。
平成八年度上半期減給分 四二万五〇〇〇円
平成八年度下半期減給分 一一万七五六〇円
(六) 入通院慰謝料 一八〇万円
原告は、本件事故により、入院六二日(約三か月)、実通院日数一一一日(約五・五か月)の治療を受け、受傷内容も、頸椎の骨折、頸髄の不全損傷を伴う重篤なものであった。
(七) 逸失利益 一五一六万一九八九円
原告は、本件事故により、後遺障害等級一二級一二号の認定を受けたものであるが、その理由は、MRIやレントゲン写真の画像上から第七頸椎に剥離骨折が認められること、第六・第七頸椎の椎間板前方よりの圧迫が認められることから、頸部から両上肢にかけて頑固な神経症状が残るものと判断されたものであり、後遺障害の内容は、左手尺側の知覚鈍麻、頸椎可動域制限、左握力の低下等々、他覚的所見を伴うものである。
また、自覚的にも、疼痛、しびれ感、ビリビリ感を伴い、原告の就労内容である現場作業員としての肉体労働に大きな影響を与え続けている。
したがって、原告の製造工程員としての肉体作業においては、極めて重大な影響を与えるものであることは多言を要しない。
よって、右残存症状に対しては、就労可能年齢六七歳(症状固定時四八歳)、一九年間の新ホフマン係数一三・一一六、労働能力喪失率一四パーセントとして、逸失利益を計算すると、次のとおり一五一六万一九八九円となる。
825万7085円×0.14×13.116=1516万1989円
(八) 後遺障害慰謝料 二四〇万円
(九) 弁護士費用 二〇〇万円
よって、原告は被告中嶋に対しては、自動車損害賠償保障法三条による損害賠償請求権に基づき、被告東に対しては、民法七一五条による損害賠償請求権に基づき、連帯して、既払金二九〇万九〇二〇円を除く金二二二一万九三六三円及びこれに対する本件事故の日である平成八年四月二四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(被告東)
1 請求原因1(一)ないし(四)は認め、(五)は知らない。
2 同2(一)は知らず、(二)は否認する。
被告中嶋は私用のため自己の車を運転中であったもので、本件事故は被告東の業務とは何の関係もないものである。
被告東は、アズモーターハウスの屋号で自動車の販売・修理取次等の営業をしているが、被告中嶋は、平成八年四月から雇用し、店員として稼働させていた。
本件事故時、被告中嶋は、出勤後、経営者である被告東がいない隙に、自らの用件のために自分の自動車で外出し、その途中で本件事故を起こしたものである。
被告中嶋の自動車を被告東の業務に使用したことは一切ないし、特に本件の場合は、被告中嶋は、本来、勤務時間中に私用のために外出することは許されないにも関わらず、被告東がいないのを幸いに私用のために外出したものであり、行為の外形から客観的に見ても、被告東の業務の執行に当たるとは到底いえない。
被告中嶋は、アズモーターハウスの店員として雇われていたもので、店に来る客の応対をなし、店頭にて自動車の販売等をなす仕事に従事していた。外に出て営業をすることはなかった。まして被告中嶋の個人所有の自動車をアズモーターハウスの業務に使用することなど全くなかった。
本件事故当時には、被告中嶋は、被告中嶋個人所有の自動車で私用のため外出したものであり、当時パートで勤務していた上出(旧姓河崎)典子によれば、被告中嶋は私用で銀行に行ったものと思っていた。
それまでにも被告東がいないときに、私用で銀行に行ったことがあったからである。
被告中嶋によれば、自分の車にガソリンを入れるために外出したとのことであるが、被告東の業務にとっては、被告中嶋が自分の車にガソリンを入れることも、あるいは銀行に行くことも、何ら関係のないことがらである。
本件事故は、被告東の業務執行とは何ら関係なく発生したものであり、被告中嶋には何らの責任もない。
3 同3ないし4は知らない。
原告の請求額は過大にすぎる。
特に逸失利益の算定は、後遺障害一二級に対するものとしては、著しく相当性を欠くものである。
(被告中嶋)
1 請求原因1は認める。
2 同2(一)(1)のうち、原告主張の注意義務があることは認め、その余は否認する。
被告中嶋は最徐行して右折進行したものであり、過失はない。
同2(一)(2)は認める。
同2(一)(3)は争う。
同2(二)(1)は認める。
3 同3は知らない。
4 同4は知らない。
(一) 入通院慰謝料
入院約二か月、通院約五・五か月とすれば、一三〇万円程度と思料される。
(二) 逸失利益
後遺障害等級は一二級であるところ、その等級の根拠となる症状としては、結局、疼痛、しびれ感等の局部の神経症状であると考えられる。
診断書をみても、器質的な障害はみられず、専ら患者本人の愁訴によるものであり、また、「障害内容の増悪・緩解の見通し」について記載がないことをみると、労働能力喪失率は一四パーセントより低く、喪失期間はむち打ちの場合と同じく、三、四年程度であるとみるべきである。
三 抗弁
(被告ら)
1 (過失相殺)
被告中嶋は、本件事故現場の道路西行き車線を東から西へ向かい進行し、本件交差点に差し掛かり、右折して南北の道路(幅員四・七メートル、東西道路との開口部幅員八・七メートル)に進入しようとして停止した。
東行き車線は渋滞のため多数の車両が停止、徐行している状態であったが、一台のトラックが被告中嶋のために停止し、進入路を空け、右折するように合図してくれた。
そこで被告中嶋は、右折を開始し、東行き車線に進入したが、右トラックは前部ボンネットがなく、トラックの左側を進行してくる単車があってもその姿が見えない状態であったので、被告中嶋は、右トラックの左側を進行してくる単車があるかもしれないと思い、安全を確認するためそろそろと最徐行して自車の前部をトラックの前方から左側に出したところ、その鼻先にいきなり原告車両が現われ、被告車両の前部右端に衝突したのである。
原告車両は、右トラックの左側面すれすれのところを進行してきたものであり、被告中嶋としては被告車両の前部を右トラックからその左側に覗かせるや否や衝突してきたものであり、安全確認義務を尽くしており、被告中嶋に過失はない。
仮に、過失があったとしても、原告は、本件事故現場に差し掛かった際に、交差点のあること(すなわち、北へ向かう幅員四・七メートルの道路があること)に容易に気付くはずであり、また、右トラックが停止し、その前車との間に車が通れる間を空けたことに気付くはずであり、そうすれば、右トラックの前方から右折車の現われることを予知できたはずであり、衝突を避ける措置をとれたはずである。
しかるに、漫然と右トラックの左側面すれすれを進行したのであり、そのことからみれば原告には重大な過失がある。
よって、仮に被告中嶋に過失があるとしても、五〇パーセントの過失相殺がなされるべきである。
2 (損害填補)
(一) 平成八年四月二七日、原告の代理人和田康志に対し、二〇万円
(二) 枚方市民病院 六万二二七〇円
(三) 川村義肢株式会社 六万九〇二〇円
(四) 黒田義肢製作所 一万九二四〇円
(五) 休業補償 六〇万円
(六) 自賠責保険金 二二四万円
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1は争う。
2 同2(一)のうち、一〇万円は認め、その余は否認する。
同2(二)は知らず、(三)は認め、(四)は知らず、(五)、(六)は認める。
第三証拠
本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。
理由
一 請求原因1(本件事故)
(一)ないし(四)は当事者間に争いがなく、(五)は被告中嶋との間では争いがなく、被告東との関係においては、証拠(甲一ないし六)によりこれを認めることができる。
二 請求原因2(責任)
1 被告中嶋が被告車両の保有者であることは争いがないから、被告中嶋は、被告車両の運行供用者と認められる。
2 本件事故の状況
証拠(甲三ないし六)によれば、被告中嶋は、本件事故現場(東西方向の片側一車線〔有効幅員合計八・九メートル〕の歩車道の区別のある道路に北から道路が交差するT字型交差点〔以下「本件交差点」という。〕)の東西道路を被告車両を運転して、東から西へ向かい本件交差点に至り、対向車線の渋滞車両の間から交差道路へ右折進行しようとし、右渋滞車両の運転手から道を譲ってもらったことに気を許し、右渋滞車両と歩道との間に約一・七メートルの通行可能な幅があったにもかかわらず、同場所を対向進行してくる車両に気を払わず、漫然と時速約五キロメートルで右折進行したため、右渋滞車両から被告車両が頭を出したところへ、対向進行してきた原告車両に被告車両を前部を衝突させ、原告もろとも路上に転倒させたものであり、被告中嶋は、右衝突まで原告車両に気が付かなかったことが認められる。
右によれば、被告中嶋には渋滞車両の左側を対向進行してくる車両についての安全確認義務を怠った過失がある。
3 被告東が、本件事故当時、同被告の経営するアズモーターハウスの従業員として被告中嶋を雇用していたことは当事者間に争いがなく、証拠(甲五、被告中嶋本人)によれば、被告中嶋は、本件事故日、アズモーターハウスに出勤した後、被告車両にガソリンを入れるために被告車両を運転して出かけ、アズモーターハウスに戻る途中で本件事故を発生させたこと、アズモーターハウスの仕事に関し被告車両を使用したことがあったこと、それについて被告東は禁止してはいなかったことが認められる。
右に反する被告東本人尋問の結果は採用できない。
右認定事実によれば、本件事故時は、被告中嶋は自己の私用のために被告車両を運転していたとしても、行為の外形からすれば、被告中嶋が被告東の事業の執行につき本件事故を発生させたと認めるべきであるから、被告東は民法七一五条の責任を免れない。
三 請求原因3(受傷、治療経過、後遺障害)
1 証拠(甲七、八)によれば、原告が本件事故により、第七頸椎骨折、頸髄不全損傷の傷害を受けたことが認められる。
2 証拠(甲九の1、2、一〇、一七の1ないし9、乙二)によれば、原告は、次のとおり前記傷害の治療を受けたことが認められる。
(一) 市立枚方市民病院
平成八年四月二四日から同年六月二四日まで入院六二日間
平成八年六月二五日から同年一二月四日まで通院(実通院日数四九日)
(二) 小原整体鍼灸院
平成八年九月三日から同年一二月一二月三日まで通院(実通院日数六三日)
3 証拠(甲一〇、一五)によれば、原告は、平成八年一二月四日、症状固定し、第七頸椎に剥離骨折が認められ、第六・第七頸椎の椎間板前方からの圧迫が認められ、これにより、頸部から両上肢にかけて頑固な神経症状(疼痛、しびれ感)が残っていること、自動車保険料率算定会により後遺障害等級一二級一二号に該当するとの認定を受けたことが認められる。
四 請求原因4(損害)
1 治療関係費 二五万二七〇〇円
証拠(甲一七の1ないし9、弁論の全趣旨)により認められる。
2 頸椎装具費用 七万八九九六円
証拠(甲一一の1ないし3、一二の1、2)により認められる。
3 入院雑費 八万〇六〇〇円
1300円×62日=8万0600円
4 通院交通費 六万〇七六〇円
市立枚方市民病院への通院実日数は、前記認定のとおり四九日であるから、通院交通費は、六万〇七六〇円となる。
5 休業損害 三二二万九一六八円
証拠(甲一三の1、一四の1、2)により認められる。
6 入通院慰謝料 一三〇万円
前記認定の原告の受傷の部位、程度及び入通院状況からすると、原告の入通院慰謝料は一三〇万円と認めるのが相当である。
7 逸失利益 七五七万七六四三円
証拠(甲一三の1、一四の1、2、二〇の1、2)によれば、原告の本件事故当時の年収は八二五万三四三五円であり、平成九年の年収は八四二万五三〇四円、平成一〇年の年収は八三九万八三八三円であることが認められ、本件事故による後遺障害によって、特段の減収は生じていないことが認められるが、証拠(原告本人)によれば、原告には後遺障害により将来の昇給等の可能性が著しく減退していること、原告の作業内容にとり後遺障害の部位程度が影響することが認められるから、原告については、七パーセントの労働能力を六七歳までの一九年間喪失するものとして、その逸失利益を算定することが相当である。
825万3435円×0.07×13.116≒757万7643円
8 後遺障害慰謝料 二四〇万円
原告の後遺障害の部位、程度からすると、原告の後遺障害慰謝料は二四〇万円と認めるのが相当である。
9 以上合計一四九七万九八六七円
五 抗弁1(過失相殺)
前記認定(二2)によれば、本件事故については、原告にも進路前方にT字型交差点があることを認識することができ、進行車線に渋滞車両が連なっていたのであるから、その渋滞車両の間から右折進行して、原告車両の進路前方に出てくる車両があることも予想しうることであったことが認められ、この点において原告にも過失が認められるから、前記損害額からその二割を過失相殺するのが相当である。
前記損害額からその二割を控除すると、一一九八万三八九三円となる。
六 抗弁2(損害填補)
1 平成八年四月二七日、原告の代理人和田康志に対し、一〇万円
当事者間に争いがなく、その余の支払についてはこれを認めるに足りる証拠はない。
2 枚方市民病院 六万二二七〇円
弁論の全趣旨により認める。
3 川村義肢株式会社 六万九〇二〇円
当事者間に争いがない。
4 黒田義肢製作所
認めるに足りる証拠はない。
5 休業補償 六〇万円
当事者間に争いがない。
6 自賠責保険金 二二四万円
当事者間に争いがない。
7 以上合計三〇七万一二九〇円
8 前記一一九八万三八九三円から右三〇七万一二九〇円を控除すると、八九一万二六〇三円となる。
七 弁護士費用(請求原因4(九))
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は八五万円と認めるのが相当である。
八 よって、原告の損害額元本は、九七六万二六〇三円となる。
(裁判官 吉波佳希)